みなさん、こんにちは。前回のニュースレター配信後、最も驚かされたできごとと言えば、もちろん、無残な決裂に終わったウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領の会談でした。メディアの前で大統領同士が激しく言い争う光景は、長く国際関係を取材してきた私にとっても、記憶にないできごとです。ナゴルノ・カラバフ問題を巡って激しく憎みあっているアルメニアとアゼルバイジャンの首脳でさえ、少なくともメディアの前では、互いに礼儀正しく振る舞ってきました。
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会談決裂を受けた朝日新聞の社説は「米国が手を引いた場合の対応策も、欧州や日本が想定すべき課題になりそうだ」と指摘しました。
- (社説)首脳会談決裂 信頼を損なう米の対応
実際、欧州連合(EU)は臨時の特別首脳会議を開き、EU全体で総額8千億ユーロ(約125兆円)の防衛費の増額を見込む「欧州再軍備計画」を進める方針で合意しました。さらに会議後、フランスのマクロン大統領は、自国が保有する核兵器の抑止力がカバーする範囲を欧州全体に広げる構想について、議論を始める考えを発表しました。
- フランスの核抑止力拡大、欧州有志国と技術協議へ マクロン氏発表
トランプ氏とゼレンスキー氏の衝突の背後にあるのは、停戦に向けたアプローチの違いだけではありません。より本質的には、同盟関係を米国の財産とは思わずに、むしろ負担だと見なすトランプ氏の考え方があります。さらに、そうした米国の姿勢は、トランプ氏の退陣後も続くかもしれない。そんな危機感が、欧州を突き動かしているのでしょう。
欧州が直面しているこの問題は、日本にとってもひとごとではありません。むしろ、より深刻かもしれません。なぜなら、欧州と米国の安全保障を支えてきた北大西洋条約機構(NATO)には米国以外に欧州の国々やカナダが参加しているのに対して、日米同盟は2国だけが参加する枠組みだからです。米国が変質した場合に、相談する相手や団結して対処するすべが日本にはないのです。
では日本はどうするべきか…